「北の国から 2008」

2008年4月27日 / 恐竜・古生物

でも、「北の国から」は一度もマトモに観た事無い訳で。
北海道・沼田町化石館に来ております。
ネットでブログを偶然見つけた事で知り合った
化石館学芸員・篠原さんとの話の中で、
伺わせて頂く事になった次第。
町の集会所を転用したという事で、
建物も古く、決して広い訳でもないですが、
絶滅海棲哺乳類の展示が充実。

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左、デスモスチルス、右の大きいのは
ヌマタカイギュウ、そのしっぽの下には
ヌマタネズミイルカ。

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中央の大きいのはプロトミンククジラ、
右の白いのは現生のトドの骨格。
トドの後ろには現生のホッキョクグマ骨格も。

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沼田産モササウルス類頭骨。
規模から言えば、組み立て骨格充実しすぎ。
また、これらの骨格のほとんどを、型を他の博物館から
借りて来て、後は前任の学芸員さんの指導の元、
自前で複製、または復元等を行ったと言うから驚き。
今では、その複製技術を活かして、他の施設からの
依頼も受け付けているという異色の技能集団。
専門の技術者がいる訳ではなく、
学芸員は篠原さん1人で、後はパートの皆さん・
愛称レプリカーズのお仕事。
長年働いておられる方もいて、今では相当なレベルの技術を
身につけられているとか。

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全長7mという、絶滅海牛類の全身骨格製作中。
作業部屋が1階で、かつ道路に面しているので
作業の様子を外から見る事が出来そうです。
主な標本がこの場所で見られるのは6月半ばまで。
7月半ばには、場所を変えてリニューアルオープン。
大物骨格標本も加わる予定。
この日は、その移転先の目の前にあるほろしん温泉に宿泊。
化石館リニューアルの後なら、化石館見学>夜は温泉で
宴会、なんてコースの旅行を計画してみても良いかなとか。
北海道編、続く。

久さん新刊フェア・守亜さん個展

2008年3月24日 / その他

22日
新横浜で新幹線を降り、横浜駅へ。
横浜駅前のコミック専門店・有隣堂コミック王国にて
飛車さんこと久正人さんの『ジャバウォッキー』第4巻発売に合わせ特設コーナーが設置され、そこに
私が製作、単行本に使用されている著者像(ニッポノサウルス風)
も展示されるというので、それを見に。

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複製原画も展示。

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私製作の著者像。
わざわざ、久さんも現場まで来て下さりました。
書店で自著が売れる所を目撃すると、その本はヒット、
というジンクスを信じて、2人でしばし張り込むも、
残念ながら目撃できず。
が、その後の移動途中の山手線車中で、
『ジャバ』4巻を読んでる人発見。ジンクスとは関係ないけど、
ほんの少しとは言え関わった人間としては嬉しい。
一旦、横浜で久さんと別れて、こちらは東京・根津の
花影抄で開催の、アクアプラント守亜さんの個展へ。

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ただ単に、動物をモチーフとした作品、ではなく
守亜さん独自の味付けが、より洗練されて来ています。

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ストラップシリーズも随分種類が増えました。
画像のものはその一部。
ネタにする動物のバリエーションも増え、それと共に
ストラップとしてのデザインの幅も広がっていて、
シリーズ全体として、より魅力的になっています。
さて、今回の東京行きのメインはここからなのです。

任務遂行のため、続々と花影抄に集まる参加者。
白熱のバトルフィールドは根津から秋葉原へ!
(次回に続く)。

茨城県博企画展「化石はたのしい!」

2008年3月17日 / 恐竜・古生物

15日、茨城県自然博物館で開催の
企画展「化石はたのしい!」初日内覧会へ。
この企画展には、復元模型制作・展示で
関わっているのです。
骨質歯鳥類(オステオドントルニス)、
復元模型コーナー
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今回の展示のために制作した模型だけでなく、
制作途中や、検討用スケッチ、資料調査中の
様子まで紹介されています。
こういう展示に使われるとは知らなかったので、
緊張感の無い顔で写っております(笑)。
おまけに復元模型の横に、資料として使用した
コアホウドリの翼の剥製を並べるという、
造形師泣かせの展示。
右下は、復元模型の画像を拡大して作った
実物大タペストリーと記念撮影。
展示関係者という事で、胸にお花が咲いてます。

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ティラノ復元の新旧展示。
右は、今回の為に制作した旧復元ティラノ。
3本指です。
ニューヨーク・アメリカ自然史博物館の
昔の展示をベースに、当時の復元方針を折り込み、
かつ「誰某の復元画風」ではない、私オリジナルの
旧復元を、というのがコンセプト。

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左上 ブラキオ&マメンキ
右上 マメンキ全身骨格と。
左下 カルノタウルス
右下 カルノタ全身骨格と。

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私の作品の画像を使ったパズル。
子供が結構楽しんでくれてました。
こういう風に作品を使ってもらえると
嬉しいですね。
以上が私が関わった展示。

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こちらは、フタバサウルス産状再現。
未発見部位は、白色で復元してあります。
俗に「全身骨格」と言われてる物がどういう
状態で見つかるのかが、日頃あまり化石に
馴染みの無い方でも判りやすい、良い展示です。
その他、古脊椎動物関係の展示としては、
今話題の丹波竜、日本初公開ギガントラプトル等
盛り沢山。
常設展示も非常に充実している
博物館ですので、これを機会に是非。
ミュージアムショップでは、今回の企画展期間限定
RC GEAR製ティラノ頭骨シルバーストラップ
販売中ですので、これもお見逃し無く。
今回、骨質歯鳥類制作に当たっては、
可能な限りの資料を集めて下さった茨城県博・国府田良樹先生、
骨質歯鳥類の論文執筆者で、今回の復元の監修者の
京都大学・松岡廣繁先生を始め、
バードカービングの鈴木勉さん
マイミクで鳥についての知識豊富なたかさん、
そのたかさんを介して直接では無いですが、鳥類イラストで
著名な箕輪義隆さんに様々なアドバイスを頂きました。
毎度おなじみ、corvoさんこと小田隆さんからは
羽毛の塗装用に、とオススメの筆を頂いたりも。
今回の作品に関わるまで、鳥についてはほとんど
知識が無く、また本格的な羽毛造形の経験が
無かったので、皆さんのアドバイスが無ければ、
絶滅鳥類の復元として全く成立しない結果になって
いたように思います。
そこが、古生物復元の難しいところなんですが、
難しいが故にいろんな方と話し合って、そこから
また人の繋がりが出来る。それが古生物復元の
面白さだとも思いますし、それを実感出来る経験でした。
っていうか、これで羽毛恐竜、
ちょっとは自信もって造れるぞ!

「日本のモササウルスと海のなかまたち」

2008年3月7日 / 恐竜・古生物

3/2
きしわだ自然資料館で開催の
「日本のモササウルスと海のなかまたち」に参加。
講演は、林原古生物学研究センター所長・鈴木茂先生。
モササウルスにだけ特化した講演というのも、相当珍しいはず。
私も、モササウルスといえば、属レベルでの
形態や大きさの違いくらいは漠然と知っていたものの、
今回の講演で、よりしっかりとした系統関係を学ぶ事が
出来て、今後モササウルス類を制作する時にも大変参考になりそう。
思いのほか、モササウルスの講演が早く終了という事で、
鈴木先生の提案により、急遽、林原古生物学研究センターの
モンゴルでの恐竜化石発掘調査についての講演が追加。
紹介された現地の画像には「おお! あれは!」
な標本もあったりで、かなりお得な講演になりました。
さて、きしわだ自然資料館といえば、チリメンモンスター

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そのチリメンモンスターの小冊子が完成しました。
自然資料館の名物出し物「チリメンモンスター捜し」は、
主に大阪府下各所に出没しております。
もし機会があれば、是非ご参加を。

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こちらは、自然資料館で販売中の、鉱物マンガ
「もっと!鉱物を楽しみたい」。
先のチリメンモンスターの表紙イラストを描かれた
露猫綾乃さんによる本。ただいま全6巻が発売中。
鉱物でこれだけネタが続くのがスゴい。
きしわだ自然資料館において、約三ヶ月おきに開催している
古生物関係の企画、次は私の出番になります。
また、詳細決まりましたら、ここで紹介しますので。

丹波竜発掘地見学

2008年2月19日 / 恐竜・古生物

16日、corvoさんこと小田隆さんからの紹介で、
今話題の丹波竜発掘現場見学へ。
事前にサイトで最寄りの下滝駅から発掘現場までの
シャトルバスの時間を調べておけば、電車での
乗り換え等での時間もほとんどなく到着です。
駅前には
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とか、
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なんてものが。
一般見学場所より。

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さて、今回はヘルメット&調査員の腕章着用の上、
発掘調査指揮の兵庫県立人と自然の博物館三枝春生先生のご案内のもと、実際の発掘現場まで
降りて見学させて頂く事に。
発掘中、もちろん研究はまだまだこれから
という事で、画像も載せられませんし、見聞きした事も
一切書けませんので悪しからず。
といっても、別に極秘にされている訳でもなく、
見つかった部分は、ちゃんと新聞報道されてますので。
いや、まぁ、こんなスゴいもんが自分の家から
余裕で日帰り出来るところで見つかるなんてねぇ、、、、。
現場では、作業に参加されている丹波竜発見者の方に
お会い出来たり、研究者・学生さん方とも
いろいろとお話を伺う事が出来ました。
シャトルバスの時間の都合で、現場でおやつに
準備中だったお汁粉を食べ損なったのが心残り、、、。

日本古生物学会 in 宇都宮 その3

2008年2月4日 / 日本古生物学会

朝、起きて外を見たら雪で真っ白。
この日の会場である栃木県立博物館への
バスの中では、林原・古生物学研究センター
實好玄貴先生から今学会のポスターセッションで発表された、
プロトケラトプスの営巣地の研究について伺う事が出来ました。
会場だけでなく、こういうチャンスに研究者の方から
じっくりマンツーマンで解説が聞けるのも学会参加
ならではの楽しみです。
バス下車後は、同じバスだった
女子学生さんコンビも合流。
その学生さんの一人が、ハドロサウルスの首から背中への
ラインの美しさを語るのを聴きつつ、博物館へ。
同じ事を男が語ると濃いマニアにしか
見えないのに、女性が語ると品の良い話に
聞こえるのは何故なんだろう。

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博物館のある中央公園入り口付近。
この日は、一般講演&記念講演。
もちろん、博物館見学も。

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地質コーナーはそれほど広くないですね。

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守亜「関八州っすよ!」
私 「御用旅っすよ!」
守亜「西郷輝彦っすよ!!」
一般講演の後は、毎回恒例の博物館食堂で食事をしつつ
仕事の打ち合わせ。面白いネタをいろいろと造らせて頂けそうです。
以上で今回の学会参加は終了。
今回も、大変多くの方にお世話になりました。
特に今回はいつにもまして、若手研究者・学生さんと
話をする事が多く、楽しかったです。
学会でお会いする学生さん達は皆さん、明るくて
社交的で、礼儀正しくて、真面目。
彼らを見ていると「今時の若いモンは」なんて台詞、
説得力ないですね。彼らが活躍できる場所が日本にも世界にも
もっと増えて欲しいと思います。
皆さん、エラくなってね
、、、、、で、復元模型ご入用の時は是非こちらへ(笑)。
次回の古生物学会は7/4~6、仙台・東北大学。
餃子の次は牛タンだ!

日本古生物学会 in 宇都宮 その2

2008年2月3日 / 日本古生物学会

古生物学会 2日目
この日は、一般講演とポスターセッション。
このブログのコメントでは常連さんの
A.E.Gさんと合流。
その昔、荒木一成さんの模型雑誌での
恐竜造形連載記事で読者投稿特集が
定期的に行われていて、私とA.E.Gさんも作品を
投稿していました。それ以来、お互いの存在は知っていて、
またネットを始めてからは頻繁に連絡を取り合うように
なっていたのですが、直接お会いするのは今回が初めて。
作品を投稿していた頃はお互いまだ高校生だったので、
あれから17年。ついに対面で感無量です。
でも、30分もすれば、以前からの知り合いの
ようにボケツッコミしてたり。
昼食のため、生協食堂に行くと
午前中にウタツサウルス(歌津魚竜)の復元に
関する発表をされた相原大介さん(北海道大学)を発見。
図々しく同席させて頂き、ウタツサウルスについて
いろいろと。また、その場には同じく北大の院生で
今回の学会で首長竜に関する発表をされる
望月直さんも。望月さんは以前からネットで
交流があったものの、初対面。
こちらからも首長竜の話を伺い、
海棲爬虫類漬けのお昼休み。

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ポスターセッション会場風景。
会場休憩室には、お茶・コーヒーなどが
用意されていますが、取り違え&無駄使いしないように
との配慮から、各自紙コップに名前を書いておくルール。
という事で、
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三葉虫描いたり、
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何か得体のしれないイラストがあったり
(どっちも連れやん)。
この日の発表も終わり、
毎回恒例・恐竜倶楽部会報編集長セッティングの飲み会。
毎回、指定されたお店に行くまで
どんな方が参加されているか判らない
福袋的な集まりです。
で、やっぱり餃子でしょう!
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最初の挨拶は、長谷川善和先生!
といっても、決して堅苦しい集まりではなく、
参加者も研究者の方から、学生、私たちの
ような素人まで多種多様で賑やか。
という事で、明日は最終日。

日本古生物学会 in 宇都宮 その1

2008年2月2日 / 日本古生物学会

学会初日はシンポジウム&懇親会。
シンポジウムでは、佐藤たまき先生の
首長竜についての講演、甲能直樹先生の
アシカ科鰭脚類についての講演がお目当て。
佐藤たまき先生は、ピー助ことフタバスズキリュウの
記載論文を執筆され、
正式な学名フタバサウルス・スズキイを命名された方。
で、懇親会。

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宇都宮大学の生協が会場。
生協でパーティーってのも、なかなか良いもんです。
今回の懇親会で初めてお会いした、
佐野市葛生化石館の学芸員さんといろいろと。
「イノストランケビア造ったんですけど、資料で
 やっぱり苦労しまして。全身骨格の画像で良いのが無くて、、」
「あの、イノストランケビア、ウチの化石館に
 全身骨格あるんですけど、、、、、」
「(絶句)いや、まさか日本に全身骨格があるとは
 思ってもみなかったんですが、、、、」
懇親会終了後は、宇都宮駅前にて2次会。

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やっぱ餃子でしょ!
本当にびっくりするくらい餃子屋だらけです。

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大学教授、学芸員、学生さん、化石ハンター、造形屋、
大手恐竜サイト管理人等等。

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またもや!
横山さん、高桑祐司先生(群馬県立自然史博物館)
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「トリケラが餃子食べてるよ!」
高桑先生、人の作品で遊ばんといて下さい、、、、。

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いや、食べましたけどね。
で、1日目終了。

夢の競演

2008年1月30日 / 恐竜・古生物

26日
「キシワダワニのレプリカを持ち込んで、
 博物館に展示されているマチカネワニ実物化石と
 並べて観察しちゃえ」という、いかにも
きしわだ自然資料館らしい直球な企画のため、
大阪大学総合学術博物館へ。
マチカネワニの標本を前に、発掘に携わられた
前きしわだ自然資料館館長・千地万造先生による
発掘当時の逸話、自然資料館友の会会員・渡辺さんによる
マチカネワニ・キシワダワニの解説等。
両標本とも、もう何度も見ているのですが、
並べて観察してみると、その違いがハッキリと実感
出来ます。

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豊中市で使用されている、マチカネワニを
モチーフにしたマンホール蓋。
見学も終わって、一階玄関に降りて行くと
自然資料館スタッフや友の会の方々から
「あ、やっと降りてきた! 今、マチカネとキシワダの
 頭を並べて記念撮影してたんですよ!
 資料としても貴重な画像撮れますよ。」とキシワダワニの
頭骨標本のレプリカを渡されて、、、。

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ただのミーハーな観光客みたいですが。
ちなみに、このマチカネワニはレプリカ。
全身骨格が壁面に張り付いてます。
比較的小型のキシワダワニはともかく、大型の
マチカネワニの頭骨を真上から撮れるのは
なかなか無いですし、キシワダワニとの2ショットと
なるとなおさらの事。
キシワダワニ・マチカネワニとの付き合いも
随分長くなって来ました。そろそろこれまでの
成果を何かの形にしたいな、とも思ってます。
でも、その前に王子動物園にマレーガビアル
見に行かなきゃな~。

「メカゴジラ、とでも呼んだら良いかな」

2008年1月4日 / その他

新年実質一回目のこのブログは、
去年の『ジェヴォーダンの獣』に続き、
「俺が語らねば誰が語る」シリーズ第2回。
今年のお題は、これまで読者層を考慮して
多用を避けていたゴジラネタから、満を持しての
『ゴジラ対メカゴジラ』(1974)
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注・ここからは完全ネタバレです----------
ゴジラ映画には、一種の「格」のようなものがあり、初代『ゴジラ』(1954)の主要スタッフである、特撮・「神様」円谷英二、監督・本多猪四郎、音楽・伊福部昭、この3人が揃う作品が一番上。さらに、その下にも格差があり、円谷英二死後以降の昭和期のシリーズ作品は、時代的に怪獣物が斜陽だった事や子供向け路線という事もあって、最下層ランクとして扱われる事が多くなります。そして『ゴジラ対メカゴジラ』も、時期的にそのランクに入る作品の一つ。が、しかし! 個人的には上位ランクの作品に引けを取らない作品だと思っています。特撮の質はお世辞にも高く無いし、スケールが特に大きい訳でもないし、メッセージ性が強くもないですが、勢いなら他のどのゴジラ映画にも負けない!! ネット等で調べても、良くて良作扱い程度のこの作品。みんな判っちゃいないぜ、その魅力。今回は『ゴジラ対メカゴジラ』について、私が納得するまで書き倒し、スッキリさせて頂きます(すでに長いがな)
先にも述べた、東宝特撮映画黄金トリオ・円谷・本多・伊福部に対して、『メカゴジラ』は監督・福田純、特撮・中野昭慶、音楽・佐藤勝、とそれぞれゴジラ映画には何作も関わっているものの、格落ち感のある陣容。と、書くとなんだかイマイチな映画に思われるかも知れませんが、「若大将シリーズ」の福田純、後年『御家人斬九郎』の音楽を手がける佐藤勝(ここ非常に重要)、そしてその度を過ぎた火薬使用量でセットを火事にするだけではなく、ついにスタジオを一棟全焼させた「爆破の中野」「火薬のショーちゃん」こと中野昭慶、と聞けば否が応でも期待が膨らみます。さらに出演には、あの松田優作が兄貴分と慕った、日本を代表する吸血鬼俳優・岸田森、『ゴジラ』以来、東宝特撮で博士役といえばこの人、かつ「死ね死ね団・ミスターX」平田昭彦、水戸黄門や暴れん坊将軍の悪代官役でお馴染み睦五朗、そしてこの一作のみで特撮ファンにその名を刻みこんだベルベラ・リーン(ってか、その他の仕事知らん)! この面子が揃えば、面白いか否かはともかく愉快な映画にならないはずがあるだろうか? いや、ない!(反語)(by デーモン小暮閣下)。おまけに、ゴジラ映画20周年映画だ。
ストーリーは、悪のブラックホール第3惑星人がゴジラを研究して造ったメカゴジラを武器に地球侵略。それに立ち向かうは、なんだか何時の間にやらなし崩し的に人類の味方になったゴジラと、沖縄の伝説の守護獣・キングシーサー!
なんで、沖縄の怪獣なのに「キング」なんだ?
細かい話・設定は各自wikiで調べなさい。
さて、当初、ブラックホール第3惑星人、ってイチイチ長いので以後「悪の人」、はメカゴジラをゴジラに偽装させて悪の限りを、記念作品とは言え相当厳しかったであろう特撮予算の範囲内で尽くします。ビル一棟だけ破壊とか。ゴジラの評判を落とした所で、一般大衆から石投げられたり、家族がイジメられたりでゴジラが精神的に追い込まれたりする事は無いと思うのですが、後でも述べますがとにかく「悪っぽい立ち振る舞い」に拘る悪の人ですので、偽正義の味方で地球人を混乱させる、という要素は決して外せなかったのでしょう。で、まぁいろいろあって、本物ゴジラとご対面。ここでついにメカゴジラが正体を表します。
さぁ、ご覧なさい、ふらぎ杯ゴジラ映画名シーン1位
「メカゴジラ現る!」

カッコイイーーーーーーー!!!!!!
もっかい観よ(とか言って一回じゃ終わらないけど)
このシーンを1位に選ぶという点が、いかに私のゴジラ映画観が普通からズレているか、を明確に表しています。が、こうしてまさにドンピシャのシーンの動画がアップされているんですから、少なくとも世界にはもう一人は同じ志の仲間がいるようです。アンタの気持ち、受け取ったぜ!
もう音楽だけで100点
悪の人、異星人なのになんで葉巻? 異星人のテクノロジーで造られたメカゴジラなのに、なんで「MG」のマーク? いや、そこがいかにも「悪」って感じで、オシャレだよ、センスイイよ。今回のこの記事のタイトル「メカゴジラ、とでも呼んだら良いかな」は、この時の平田昭彦演じる宮島博士のセリフ。ご覧の通り、悪の人もメカゴジラと呼んでいるので大当たりな訳ですが、これは宮島博士のネーミングセンスが宇宙レベルなのか、悪の人が地球レベルなのか。この後、宮島博士はメカゴジラの修理のため悪の人に誘拐されるので、どうも宮島博士が地球人離れしてるっぽい。結局この時は、ゴジラ・メカゴジラ双方ダメージを負って引き分け。「メカゴジラがお前と同じ性能と思ったら大間違いだぞ」と啖呵切った割に情けない結果ですが、そこもまた悪っぽくて良し。おまけに舞台がコンビナートなので、背景燃えまくってます。好きなだけ爆破したくてコンビナートを舞台に選んだとしか思えん。
その後いろいろあって舞台は沖縄。キングシーサーを目覚めさせようという段(不憫なアンギラスの事は忘れてあげましょう)。キングシーサー復活にはベルベラ・リーン(役名じゃなくて役者の名前だけど、以後このまま)が「ミヤラビの祈り」を歌わなければなりません。しかも何故かガッチリフルコーラスで。砂浜なのにどこからとも無く音楽が流れ、熱唱ベルベラ・リーン。、、、、、ベタベタの昭和歌謡で、しかも歌詞は日本本土の共通語なんすけど、それで良いのか、ウチナーンチュ。まぁ、守護神に「キング」とか付けてるくらいだから、琉球って異文化流入しまくってたんだね、きっと。ところで、このシーン、背後からメカゴジラが迫って来ていて、実は相当に緊迫した状況、歌なんて余裕ないです。っていうか、皆さんすでにメカゴジラの攻撃の射程範囲に入ってます。それにメカゴジラって空飛べるんだぜ。なのに、一思いにやってしまわないのは、きっと「悪」に拘ってるから。「悪」としてのお約束を本当に律儀に守ってくれます。劇中には出てこないけど、悪の国特産「冥土の土産」もちゃんと準備してくれていたに違いない。世の中、こんなに約束守る人ばかりだったら良いのにね。皆さんも是非見習いましょう。
で、おはようスパンクキングシーサー。
キングシーサーの特殊能力は、敵の光線を右目で吸収して、そのまま左目から打ち返すのです。なんか強そう! これならメカゴジラとも良い勝負するんじゃね?と期待させますが、そうは行きません。打ち返せるのはビーム等の光学攻撃だけ。つまりミサイルなんかの物理攻撃には糞の役にも立ちゃしねぇ。案の定、メカゴジラにミサイルでボコにされます。
という事で、本作クライマックス
「ゴジラ・キングシーサー対メカゴジラ」

カッコイイーーーーーーー!!!!!!
もっかい観(以下略)
音楽で120点や!
そして、ここにもう一人同じ志の仲間が!
2対1でメカゴジラ不利かと思いきや、今回はフル武装展開で応戦。メカゴジラ中央、画面左右のゴジラ・キングシーサーを一度に攻撃するシーンは、縦:横=1:2.35という画面比率のシネマスコープ(ここで紹介の動画は画面比率が実物と違います。)を最大限に利用した、『キングコング対ゴジラ』・中禅寺湖のシーンと並ぶゴジラ映画屈指の名シーンと言えましょう!(硬派なゴジラマニアには怒られそうだけど)。攻撃でゴジラ・キングシーサーが倒れたにも関わらず、さらにメカゴジラがあらぬ方向に無駄にミサイルを撃ち込むのは、恐らく構図的にそこらへんが寂しかったから、そしてそれが中野演出!(勝手断言)。
ゴジラとの初戦で懲りたのか、とにかく出し惜しみなく武装全開、中国の旧正月祝いの爆竹状態のメカゴジラ。あ、そうだ、爆竹で思い出した。挨拶忘れてましたね。皆様、明けましておめでとうございます。ところで、怪獣のスーツというのは、軽量な物といっても数十キロはあります。そんな物を着た人間が、他の怪獣役にのしかかるというのは相当に危険な行為。しかし、このシーンで逃げ回るゴジラ・キングシーサーは結構なダンゴ状態。さらに加えて、スーツの中は視界が非常に悪く、爆発シーンの撮影では、中からは爆発位置がほとんど視認出来ないため非常にデリケートな演出・打ち合わせが必要と言われるのですが、このシーンではそんな繊細さが微塵も見られません。もしかすると、センチ単位の移動さえ決めた「殺陣」を演出した可能性も無い訳ではありませんが、映画全編を見てもそんな繊細な事をするように見えないので、ここはゴジラ・キングシーサーの中の人に「え~、本気で避けないと死ぬよ。でもセットから逃げたら俺が殺す」な指示が出ていたと想像するほうが面白いのでそうしとこう。先のコンビナートのシーンも含め、こんだけ火薬使たら、そら破壊用のビルを沢山準備する予算無いわなぁ。
火力では全く敵わないゴジラ、奥の手で自分の体を磁石に変化させてメカゴジラを捕まえる策を取ります。どこかの島で、雷に打たれる事により体を磁石化させる修行(?)シーンが劇中にあるのです。、、、、確か、ゴジラって一定以上の高圧電流に弱い、っていう設定が緩くあったよね。それでキングコングや自衛隊に追いつめられた事があるし。そんな電気嫌いのゴジラが地球の平和のために辛い修行を、、、(泣)。あんなにワルだった子が、みんなの為に自分を犠牲にして、、、立派になったねぇ。そうね、もう初登場から20年だもんね、ゴジラも大人になったのね。元ヤンキー・族の方が改心して先生になっちゃったりして、生徒のために東奔西走、な話を見聞きするたびに、私はこの時のゴジラを思い出さずにはおれないのです。エエ話や、、、、。
さぁ、メカゴジラ捕まえた! と、ここぞとばかりに嬉しげに飛び出して来るキングシーサー。お前今まで何してたんだ? ゴジラに適当に見せ場を譲って貰って、トドメはやっぱりゴジラ。メカゴジラの首へし折って決着! ちなみに、この翌年、この映画の直接の続編になる『メカゴジラの逆襲』が公開されます。それに登場するメカゴジラMk2は、ゴジラ対策として、首を折られても良いようにと、首にさらにもう一つ簡易の頭部を用意するという対抗策を準備。一見、スゴいようですが、そもそもゴジラの首を折られるのが前提というのが弱気にもほどがないか?
話の軸として存在するものの、実際登場するとロクに役に立たないキングシーサー。でも、このキングシーサーがこの映画の裏主役なのですよ。世の中、ゴジラやメカゴジラのような才能や容姿を持って生まれて、何度も華やかな舞台に立てる人間は一握りなのです。キングシーサーくらいの活躍でも人生上出来だと思いませんか? しかもヤバい時は舞台奥に引っ込んでいるという、引き際も見事。まぁ、引き際が見事すぎて、翌年の『メカゴジラの逆襲』のタイトルロールで流れる『ゴジラ対メカゴジラ』のダイジェストでは、キングシーサーはほぼ無かった事になってますが。キングシーサーには、一度目覚めて暴れると、またしばらく眠りについてしまうという設定があるそうなのです。どっちかというと次の年に目覚めたほうが役に立ったと思うけど。メカゴジラMk2は、護衛役にチタノザウルスを引き連れて暴れるんで、今度はゴジラが2体を相手にする事になり結構苦戦するんだよな。ただ、そんな状況で参戦すれば、今回より辛い目に合う事も確実なんで、そういう意味では、自分を知る、分をわきまえる事の大切さを教えてくれているのかも知れません、いやそうに違いない。原水爆の脅威や自然の大切さを訴えるのも大切ですが、こういう日常に直結する教訓も含んでいる、それがゴジラ映画、そして『ゴジラ対メカゴジラ』の素晴らしい所なのです、、、、、、、っていうか、そんなとこでも訴えとかんと只のバカ映画やがな。
ああ、気がつけば今回の文章、もうこんな長さに! 特撮自体の話(中野フラッシュとか、海ゴジ陸ゴジとか)や、本編の話・カッコ良いか悪いかが判らんところがオチャメな岸田森、何気に出演作の中でも一番ダンディで素敵な役なんじゃないか平田昭彦等等、まだまだ語りたい事は山ほどあるのに、そろそろこっちの体力・集中力が限界のようです。結局、今回も納得は出来なさそうですが、いずれ機会があればまた続きを、、、、、もういいですか?
さぁ、この記事読んで『ゴジラ対メカゴジラ』が
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中野監督のオーディオ・コメンタリーも素敵だし。
今年のお年玉、ツッコむならここだ!

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